インプラント義歯に使われる東ソーの「ジルコニア粉末」を取材

東ソーさんの「ジルコニア粉末 Zpex」の取材記事を、サーイ・イサラさんの3月号に掲載して頂きました。紙媒体なので記事へのリンクはありません。

同社は大手総合化学メーカーです。家電業界で名を聞く機会はあまりありませんが、年間売上高8600億円(2019年3月期)を超える国内有数の化学メーカーです。

連載で注目したのは、近年歯科医療の現場で存在感の増している、インプラント義歯のセラミックス素材「ジルコニア」。詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)の材料です。ジルコニアはいわゆる「銀歯」と比べ、高い硬度と耐久性を持ち、自然な歯の色が再現できるうえ、汚れが落ちやすくて虫歯の再発が防ぎやすく、セラミックスなので金属アレルギーの心配もないと良いこと尽くめなのです。

東ソーさんが作っているのは詰め物や義歯そのものではなく、形成前の粉末です。ジルコニア粉末を利用してブロックメーカーがブロックを作り、歯科技工士が歯科医の注文に応じて削り出し、焼成して完成。歯科医の手を通じて患者に装着されます。

ジルコニア粉末は義歯専用の素材というわけではありません。このため、最初から義歯素材向けに研究開発したのではなく、最初はどのような用途に適しているかも含めて研究しながら開発し、義歯の素材に使ったら相性が良いのではないかと気が付いて、営業部隊がそちらの方面での普及に励んだという順序なのだそうです。なお、同社は現在ジルコニア粉末の業界最大手です。

ジルコニア粉末の粒子サイズは直径50ミクロンという極小微粒子。開発に際しては、電子顕微鏡で覗きながら、強度はそのままで透明感のある自然な色を実現できる最適な粒子構造を探ったそうです。現在は原子一つひとつの配列まで制御するために、水素原子も見られる世界最高峰の電子顕微鏡を導入して研究しているとのことでした。

取材はオンラインで行いました。実はこの媒体の取材がオンラインになったのは、これが初めてです。新型コロナで外出を控えていましたが、各社にはなんだかんだで対面取材に応じてもらっていました。東ソーさんは関係者が東京・三重・山口でばらけることもあり、オンラインのほうが話が聴きやすいだろうとなった次第です。

ちなみに、ちょうどこの原稿を執筆していた頃、奥歯の被せ物が外れて歯科医に行く機会があり、ジルコニアのパンフレットを頂戴しました。

折角なのでジルコニアで入れてもらおうかなと思っていたら、型を取る前に決めないといけないのですね。「え、もう銀歯で型を取っちゃいましたよ。やり直しますか」と聞かれ、面倒なので銀歯で済ませてしまいました。歯科医からは「奥歯はジルコニアより金のほうが長持ちしますよ」とも言われました。もちろん、金はジルコニアより更に高額なのですけれど。ご参考まで。

サーイ・イサラ 3月号 日本のモノ語り 「第53回 ジルコニア粉末「Zpex」(東ソー)」