11月2日、富士通とレノボによる合弁会社設立の共同記者会見に出席してきました。
この2社に日本政策投資銀行を加え、PC事業の合弁会社「富士通クライアントコンピューティング株式会社(略称はFCCL)」を設立するという内容です。
FCCLは2016年2月に設立された同名の会社があり、FCCLの株式の51%をレノボが、5%を日本政策投資銀行が引き受け、44%を富士通が保持し、今回の合弁会社が社名や組織を引き継ぐ形になり、基本的に人事上の変更はないとのこと。この合弁を通して富士通の受け取る譲渡価額は280億円になるそうです。
工場の閉鎖を含め、国内PC拠点の統廃合は一切なく、ブランドもそのまま残るとのことで、「法人ユースも個人ユースも、エンドユーザーから見るとすぐに何か変わるようには見えないだろう」と述べていました。
今回の戦略的提携の狙いをまとめたスライド。「最終的にはエンドユーザーにとって魅力ある製品やサービスの提供が可能になる」と強調していました
少々分かりにくいのですが、平たく言うとFCCLの株の51%をレノボが買い取り、5%を日本政策投資銀行が買い取ったということですね。過半数をレノボが抑えて議決権を確保しているということは、子会社化しているということだし、レノボグループの傘下に間違いはないので、実質的に富士通のパソコン事業を買収したと捉えても差し支えないと思います。ただ、形式上はあくまで合弁会社の設立であり、統合でもなければ買収でもありません。
FCCLの斎藤社長も質疑応答の際に「統合ではありません」と強く断言していたので、このあたり、メディアがどのくらい富士通の気持ちを汲むのかちょっと気になった部分でもありました。
通信社や新聞社は割と容赦がなく、ざっと見たところ一番辛辣なのは、NHK NEWS WEBでした。見出しからして「富士通 レノボ・グループとのパソコン事業統合を正式発表」です。大して長くない本文の中で5箇所も「統合」の言葉を使っているので、多分わざとやっているのでしょう。なぜかは知りませんが。
富士通側のメリットはお金であり、レノボのスケールメリットを活かした部材調達や研究開発力であり、業界人ならずとも分かりやすいはずです。
レノボ側はどうなのか。レノボのスケールメリットがより大きくなるのは間違いありませんが、事業として統合せず、ブランドを残すということは、PC市場ではレノボ製品と競合し続けるということ。どこにメリットがあるのか見えづらいかもしれません。これは、富士通の技術力や販売力であり、ブランドイメージが利用できること、そのものと言えそうです。
NECに次いで富士通もレノボ傘下となり、3社を併せた国内市場シェアは4割超の圧倒的なボリュームになります。
今後、レノボがこのスケールメリットをどう活かしていくのか。あるいは、東芝やVAIOなど他の国内メーカーや、デル、日本HP、ASUS、エイサーなど、他の海外メーカーにどのように影響していくのか気になるところ。Let’snote擁するパナソニックだけは淡々と我が道を歩み続けていく気がしてなりませんが…。
日本のPC業界の行く末を考えてしまう記者会見でした。
左から、レノボのシニアバイスプレジデント 兼 アジアパシフィック地域プレジデントのケン・ウォン氏、富士通代表取締役副社長 CFOの塚野英博氏、レノボの会長 兼 CEOのヤンチン・ヤン氏、富士通代表取締役社長の田中達也氏、レノボのエグゼクティブバイスプレジデント 兼 CFOのワイミン・ウォン氏、FCCL 代表取締役社長の齊藤邦彰氏
ところで裏話をひとつ。
今回の会見は文字通り直前に案内されました。遅めのランチを食べていたら富士通の広報担当さんからスマホに電話が入り、「大変急なご案内で恐縮なのですが…」と、1時間半後に開始する記者会見を突然案内されて苦笑いです。メールでの案内も15分ほど前に送ってくれていたのですが、ランチの準備でスルーしていました。
過去にも数回ですが、別の企業からこういう緊急記者会見に呼ばれたことはあります。
仕方のない事情があるのは分かりますし、こちらもこういうケースは無理をしてまで出席しませんが、一人で活動するフリーランスや人の少ない零細編集部では、出席したくても別件で身動きが取れず代理出席者すら手配できないケースもあるので正直言って嬉しくなる扱いではありません。当然ながら遅刻出席者も普段より圧倒的に多くなります。
それでもざっと見渡して100人近いメディア関係者が出席していました。メディアの関心の高いことを伺わせますね。
フラグシップモデルの「LIFEBOOK UH90/B3」「LIFEBOOK AH77/B3」「LIFEBOOK AH53/B3」。10月17日に開催した発表会で撮影したものです
同じく、セットモデルも用意する「Windows Mixed Reality対応ヘッドセット」。いよいよARやVRが家庭に入っていく時代です